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  ●ノールックボス


ボスは、時々外の惑星まで飛んで日焼けして帰ってくる。
そういう話を聞いているだけで、帰ってきたボスの顔を確認したわけではない。
ボスの顔を見たとしても、ボスの顔は見ていない。
ボスは、ボス。
そのように思ってしまうから。空気がその存在を示してくれるから。
一度、その人間を認識した後では、私はあまり人の顔を見ないようになる。
ある特別な存在を除いて、きっとそうなる。


  ●吉野家


「並1つ」

「何のことだ?」

「牛丼のことだ」

「うちにはないよ」

「なんで?」

「ないものはない」

「吉野家でしょ?」

「そうだけど何か?」

「並1つ」

「よそへ行ってくれ」

「じゃあカツ丼でいい」

「はい。カツ丼一丁!」


2009.09.14  青空のち真っ白け
  ●ヴァリエーション


にほん橋か、ニッポン橋かという話だ。
にほんだという声、ニッポンだという声、どっちも同じだという声、時によって変わるのだという声、そもそも何の話だという声……。

「ニッポンというと、何かかたいんだよねえ」

一人がそう言うと、瞬時にそれについての反応の声が広がる。
声は、狭い車内の中を白い熱気で覆い、それはまるで無関係な人々の鼻先にまで届いていた。
一つのテーマさえあれば、話は尽きることがないのだろうか。
電車は、日本橋に到着し、会議にブレーキをかけた。
ニホンザルの一団は、静かに降りていった。
  ●タケル


「どうさせていただきましょう?」

コンビニで犬とお弁当とお菓子と雑誌とアイスを買うと、店員は言った。
何もかにもを一緒にしてもらい家に帰る。
驚いたことに、お弁当やお菓子やアイスは全部犬が食べてしまっていた。
犬は薄っぺらいレジ袋の中で、くつろぎながら雑誌を広げていた。
タケルと名づけた。


  ●カプサイシン


「かみさま、お願いします。
どうか、一握りの元気をください。
 明日からも生きていけるような。」

「いいえ、ひとちがいですわ」
とカプサイシンは恐縮がちに言った。
「私は、新しいカプセルです」

早速、試しにカプセルに入って20分ほど休んだ。
少しだけ元気が回復した。